映画『寝ずの番』

中島らも原作のこの作品は、日本では、通夜に死人と一晩過ごしてあの世に送り出す『寝ずの番』という習慣があるが、この映画では、上方落語の重鎮(監督の兄でもある長門裕之が演じる)が亡くなり、その通夜に集まった弟子(中井貴一)ら、一癖もふた癖もある連中の、果てしないバカ騒ぎを描いています。
いい大人がオンナ自慢をはじめたり、不謹慎にも死体を引っ張りだしてダンスをはじめたり、挙句の果てにはエロ歌三味線対決なんぞを本気ではじめてしまったり、本来はこうした通夜を笑いにするのは不謹慎な話です。もちろん、落語家らしく故人を明るく送ろうという意味合いもあるので、多少は賑やかにという雰囲気はあります。ですが基本は至ってまじめ。故人の思い出話などを語りあい、故人を偲ぶのは普通の通夜と同じです。
ですが、故人が落語家で訪れるものも落語家なので、どうしても面白かった思い出話ばかりが話題に上ります。
故人の面白い思い出話に花を咲かせているうちに、皆故人を失った悲しみが増幅していくシーンなどは、笑いながらも 胸があつくなります。
人間は誰もが死と隣り合わせで生活しています。通夜という死の儀式において、故人の死を悼みつつ、生きているという喜びを集まった皆で分かち合う。そういう通夜があっても、決して罰はあたらないと思います。残された人々が泣きぬれて悲しみにくれる通夜よりも、思い出話に笑顔がこぼれる、そういう通夜ができるような人になりたいと、私は思うのです。
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